仕掛けが着底し、底ダチを取ろうと竿を煽った、その時、アジビシ釣りに於いて、初体験となる事態が起きた。

根掛り(ねがかり。海中の障害物に仕掛けが引っ掛かってしまう事)である。

まともな沖釣りを始めて十数年、二百回弱の釣り船乗船のほとんどをアジビシ船に費やしてきたが、アジビシ船での根掛りは初めての体験である。
私は少し戸惑いながらも、リールのドラッグ(張力緩衝機能。魚が掛ったときに過大な引っ張り衝撃から糸の破断を防止する装置)をフルロックさせ、竿先を海面に向けて全力で引き抜こうとした。


しかし、どうやら海底の岩にビシごとガッチリと噛み込んだらしく、ビクともしない。スプールを押さえて引くが、巻いてある糸はPE6号、破断強度は32Kgを超える。
しかも船は停止しているようで、少しづつ移動している。
このままでは竿が折れるかドラッグが破損するかのどちらかになる。
ミチイト50mとビシを放棄する以外に道は開けない。
断腸の思いでリールの前からミチイトを切断する。
リールには300mほど巻いてあったが、北海道で船のスクリューに絡み付いて150mを損失し、今回が50mである。
これで完全に巻き直すハメになった……。