今まで10年、千尾以上のアジサバを釣り上げた愛竿が折れたのである。
心の心棒が折れるような気がしたが、気を取り直してスペアの穂先に交換した。
もちろん、リールのリセットもした。

……ナニかがおかしい……。
左舷胴の前ではイナダ(ブリの子)が来たというが、こっちは本命のアジ・サバ、イナダみたいな外道どころかカサゴやトラギスすら食わない。
タナを変え、竿の振り方を変え、食い渋りの際に使う、一発タナ取りの秘奥儀まで使うが竿はピクリともしない。
隣の兄ちゃんなぞ、パタパタと5尾連釣しているのに、である。


10時30分、潮が止まった。
しばらくして、今日最後の移動。
航路から300mほど西にきた30mダチである。
かなり早いペースであるが、ここでコマセをお代わりした。
凍っているコマセをほぐしながら、この不運の原因を考えてみる。
走水神社にお参りしなかったからか?
いつもは座らない右舷に陣取ったからか?
朝食をイナリ寿司にしなかったからか?
腹に溜った『悪しき汁』を海に吐いたからか?
様々、考え付く。
そして、白いビニールに入った2杯の冷凍イカがチラリと脳裏をよぎった。
まさか丸ボウズ?
私の気は焦るばかりだった。